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音楽は人生を豊かにする「甘み」――シロップ、そして砂糖――ハイチ出身のギタリスト アモス・クランジュ氏 インタビュー
2026年5月31日、日本とハイチの外交関係樹立70周年を記念して、レクチャーコンサート「ハイチからの詩とリズム」が東京・赤坂区民センター区民ホールで開催されました。
公演では、ハイチの音楽グループ「Métiskacao(メティスカカオ)」が、ハイチならではの多彩なリズムや音楽文化を紹介。日本からはピアニスト、トランペット奏者、作曲家の曽根麻央氏も出演し、音楽を通じたハイチと日本の交流が繰り広げられました。
今回は、公演に出演したギタリスト、作曲家、音楽監督のアモス・クランジュ氏にインタビュー。日本の観客との交流や曽根麻央氏との共演、さまざまな文化が溶け合うハイチ音楽の魅力、そして自身の人生における音楽への思いについて伺いました。
(インタビュー:2026年5月31日)
1. 会場から受け取った、大きなエネルギー
今日の公演を終えて、心の中に大きなエネルギーと力を感じました。言葉で表すのは難しいのですが、観客の皆さんが立ち上がって拍手を送ってくださったとき、私たちは大きな喜びに包まれました。
妻のケシタ・クレナール、そしてクロード・サチュルヌと、その瞬間を一緒に分かち合えたことも本当にうれしかったです。観客の皆さんの温かさと熱気によって、私たちにとって特別な時間となりました。
2. 言葉を越えて届いた、ハイチの歌
私たちは主にハイチ・クレオール語で歌い、フランス語の歌も披露しました。観客の皆さんには歌詞の意味が分からない部分もあったと思います。それでも、私たちの音楽が皆さんに届いていることを感じることができました。
なぜそうなるのかを言葉で説明するのは難しいのですが、メロディーやハーモニー、リズムを通して、私たちの思いを伝えることができたのだと思います。聴いてくださる皆さんと確かなつながりを感じることができ、とても素晴らしい経験になりました。

3. 曽根麻央氏との共演――「さくらさくら」を日本の皆さんへ
「さくらさくら」の共演に先立ち、曽根麻央さんはハイチの作品を何曲か演奏しました。その中には、「黒いショパン(Chopin noir)」とも呼ばれるハイチの著名なピアニスト・作曲家、ルドビク・ラモトの作品もありました。
曽根さんの演奏は技術的にも素晴らしく、音楽に込められた繊細な感情表現にも深く感銘を受けました。
「さくらさくら」は、私にとって以前から親しみのある曲です。私はフランスで音楽を教えていますが、バッハやベートーベンだけでなく、ヨーロッパ以外の音楽を生徒たちに紹介したいとき、「さくらさくら」は思い浮かぶ曲の一つです。とても美しく、感情表現に富んだ旋律だと思います。
今回、「さくらさくら」を演奏することは、日本の皆さんへの贈り物のような気持ちでした。長年親しんできたこの旋律を、日本の皆さんと分かち合えたことは、私にとって特別なことでした。この曲には、日本の心の一端が表れているように感じています。

4. 世界の文化が出会う場所――ハイチ音楽の魅力
ハイチでは、誰もが歌い、誰もが踊ります。私たちはよく、自分たちのことを「歌い、踊り、笑う人々」だと言います。
私のレパートリーはハイチ音楽だけではありませんが、その多くはハイチの豊かな音楽的伝統に根ざしています。ハイチ音楽には、特にアフリカやフランスをはじめとするヨーロッパなど、さまざまな文化の影響が反映されています。
ある意味で、ハイチ音楽は「世界のさまざまな文化が出会う場所」です。異なる伝統や歴史、音楽表現が重なり合って生まれた、そうした文化の融合こそが、ハイチ音楽ならではの魅力なのだと思います。
5. 学び、演奏し、分かち合う――音楽をつくるということ
私にとって、音楽に関わるすべての過程が大切です。作曲すること、演奏すること、学ぶこと、そして人と分かち合うこと。それらはすべてつながっており、音楽をつくるうえで欠かすことができません。
なかでも、音楽を人と分かち合うことには、とても深い意味があると思っています。しかし、本当の意味で音楽を分かち合うためには、まず自分自身がしっかりと学び、深く理解することが必要です。
楽譜を読み、初見で演奏し、運指を考え、音やハーモニーを探求する。一つ一つの過程が大切です。音楽を学ぶことで新しい発見があり、それを人と分かち合うことで、また別の発見があります。そうしたすべての積み重ねが、音楽をより豊かなものにしてくれるのです。

6. 「音楽は私の人生」――家族から始まった音楽との歩み
幼い頃、家族を通して音楽と出会い、その後、大学で音楽を学びました。現在は、私自身も音楽を教え、これまで培ってきた知識や経験を次の世代に伝えています。振り返れば、音楽はいつも私の人生とともにありました。
もちろん、私はほかのこともできます。料理もできますし、本を読むことも、演じることもできます。でも、いつも心が向かうのは音楽です。音楽こそ、私が本当にやりたいことなのです。
私は音楽家です。そして音楽は、単なる職業ではなく、私自身を形づくる大切な一部です。音楽は、私の人生そのものなのです。

7. 音楽は、人生を豊かにする「甘み」
音楽は人生の甘みです。人生をより豊かに、より美しくしてくれる、シロップや砂糖のようなものです。
音楽には、どんなに苦しいときにも、私たちに幸せをもたらす力があります。困難に直面したとき、大切なものを失ったとき、あるいは事故に遭った後でさえ、音楽は心を慰め、私たちのうちにある喜びを呼び覚ましてくれます。
人生に何が起きたとしても、音楽には私たちの心を明るくし、生きることの喜びを思い出させてくれる、素晴らしい力があると私は信じています。



