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2019/03/13 特別インタビュー

レクチャーコンサート「韓日青年伝統音楽家の出会い」  ミン・ヨンチ氏(伝統音楽家・打楽器奏者)インタビュー

レクチャーコンサートの前日(2/14)のリハーサル直後、出演者のひとり、両面太鼓チャンゴなど様々な楽器を奏するミン・ヨンチにインタビューを行なった。ミンさんは、伝統音楽家でありながら韓国と日本両国でジャンルを超え多くのミュージシャンとコラボレーションをしてきたアーティストでもある。ミンさんと共に韓国から来たのは、擦弦楽器ヘグムのキム・ジュンヒと笛ピリとチャルメラのような木管楽器テピョンソのパク・ミウン。

キム・ジュンヒさんはソウル大学の時の同級生なんです。当時は学生デモの時代ですが、僕たちは明日どこのディスコ行く?と言ったり、新しいものが好きな、はみ出していた2人だったんです(笑)伝統音楽はちゃんと学んでいたのですが、新しいものも好きで。そしてそれは今も変わらずなんですよ。パク・ミウンさんは新人ですがピリとテピョンソがすごく上手。インターナショナルにやってみますか?と聞いたら、是非是非、ということでお連れしました。皆ほんと日本が大好きなんですよ。

ーー明日のプログラムを見ますと、最初が「月虹(げっこう)」というタイトルの曲です。

これは韓国の音楽家3人で奏するのですが、題名を考えるときに、最近の韓日関係に霧がかかっている気がしたので、虹が出たらよいと思って「月虹」にしました。曲の構成は月虹が出るまでの過程になっています。僕が楽譜に書いたのは8分。この曲20分あるんですが、後は即興。彼らも僕もジャズのミュージシャンのように奏します。明日の本番が楽しみですね。

ーー日本の3人の伝統音楽家と一緒に2曲、「アメイジング・グレイス」と「牛深ハイヤ節」が予定されています。

<牛深…>のような明るいノリの4拍子の曲というのは韓国にないんですね。僕は日本で育っていますからわかりますが、後の2人の韓国人音楽家は全く知らなかったはずです。でも、ちゃんと自分達で作り上げてくれました。また、僕が日本の曲の途中韓国旅行に行きませんか、と提案したので途中韓国の音も聞こえてきます。<アメイジング・グレイス>では<アリラン>が入ってきます。この2曲は小節もキーも同じで、不思議と合うんです。

ーーミンさんご自身は日本の伝統楽器とは何度も共演してきていますよね。

そうですね。今回面白いと思ったのは、出演者のプロフィルを見ると、日本の音楽家も韓国の音楽家も大学を出ている、つまり双方五線譜でできるということなんです。共演曲ではリハーサルの時間が限られるなど制約がある。そういう中で、約束事を決めるために五線譜という共通項があることは良かったと思います。

ーー今回のメンバーならでのアピールできるところは?

韓国の音楽家は皆人気でテクニックもすばらしいし、日本の音楽家も基礎的な力が素晴らしいと感じました。ですから今回のような少人数編成でこそ音楽の魅力が味わえると思います。一人がぽんと音を出すと観客の皆さんがその音に集中しますし、その集中度を演出できる人たちなので、そこが面白いのではと思います。

ーー明日のライブをみてくれる方たちに見てほしいポイントはありますか?

昨今の韓日関係悪化がありますが、個人レベルだとむちゃくちゃ仲が良いじゃないですか。韓国の人も日本が大好きだし、ということをこの舞台で示したい。大きな力に負けない両国の国民性を、音楽、文化のパワーで見せたいです。僕は在日韓国人なんです。だから自分の中に1年365日、日本と韓国が存在しているので絶対にこの2つの国を切り離すことができないんですよ。
確かに日本と韓国は違う。たとえば、韓国人は大きな声で怒る。それはよいことで日本の人もやってもいいと思う。でも、はしたないと言う日本の人もいる。日本は自然災害が多くいつどこで何が起こるかわからない。だから、元気?!ってストレートに聞かないで、慮ることが必要になってくる。反対に天災があまりない韓国の人にはそこがわからない。僕は、毎日毎日、韓日の差を考えています。


ーー韓国の伝統打楽器は、たとえばキム・ドクスさんなど、海外のジャズ・フェスティバルに呼ばれるなど、以前から世界的な評価を受けてきました

僕の師である(韓国を代表する打楽器奏者の)キム・ドクス先生、僕はどこに行っても彼の影を追っています。以前、日本の太鼓奏者の林英哲さんに言われたのですが、キムさんもミンさんも、演奏が本当にパワフルでエモーショナル、そこが素晴らしい、と。必ず絶頂まで持っていって終わらせてくれる、そういう音楽の“道”を知っているといわれたこともありました。そのあたりかもしれません。

ーー韓国の伝統音楽の魅力はなんでしょうか?

音楽が難しいといわれているのは、韓国とインド。韓国は特にリズムが難しい。リズムにはそれぞれ名前がついていて何百種類もある。変拍子も多い。そしてこれらのリズムをすべて演奏できないといけないんですね。

ーー今韓国のポップス、K-POPも世界的な成功を収めていますが。

韓国人は、気質的にも極めるのが好きで目立ちたがり屋でそれがポップスにも良い風に出ていると思います。ちゃんと歌って踊れるのも素晴らしいと思います。

ーー日韓というキーワードで、ミンさんがこれからしたいことはありますか?

僕は今まで色々なことをやってきましたが、やはり韓日のイベントというと燃えますね。<リバーダンス>ってご存知ですか?アイルランド人のアメリカへの移民がテーマのミュージカル舞台。これを韓国に置き換えたものを作ってみたいんです。音楽だけじゃなくて、物語も歌もダンスもあって。アカデミックすぎずに皆が楽しめる大衆的なものを作ってみたいですね。

果たして、次の日の韓国と日本の共演コンサートは、両国の音楽家の素晴らしい技術に興奮しつつ、温かいコラボレーションがあった。まさに、ミン・ヨンチさんが言ったように、音楽の力を見せた、そんな一夜になったと思う。