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2024/08/27 特別インタビュー

サントロフィ インタビュー

Interviewサントロフィ ジャパン・ツアー2024 

聞き手:音楽ライター 吉本秀純

 

2020年に欧州のレーベルから初のアルバム『アレイワ』を発表し、ガーナが育んできたハイライフの歴史を現代に継承する若手バンドとして高い評価と注目を集めてきたサントロフィ。すでにヨーロッパ各地で開催される大型野外音楽フェスにも数多く出演し、ライブ・バンドとしての力量の高さには定評のある彼らが、全国13会場を巡回する本格的なホール・ツアーとして実現。彼らの初来日公演は、確かな演奏力でハイライフの多彩なスタイルを網羅した変幻自在のグルーヴにより、あらゆる音楽ファンを満足させた圧巻のステージとなった。




親しみやすいメロディーを持った「マダンフォ・ワ」から幕を開けた前半は、祝祭的なホーンの旋律とともにファンキーさを強めた「アレイワ」、デビュー作の中でも最もダンサブルな「クワア・クワア」といった人気曲を連発して早くも盛り上げモードに。

1950年代に主流だった、カリプソなどからの影響が強かったビッグ・バンド形式のハイライフを彷彿させる「オド・マバ」などで古き良き時代への敬愛も示すと、メンバー紹介では全員が打楽器奏者としても優れた腕前を持つ側面を披露。前半のラストでは、偉大な先輩バンドであるアフリカン・ブラザーズ・バンドのトロピカルな名曲も取り上げ、緩急の効いたグルーヴで観客を魅了した。

 

ガーナの主要言語の一つであるトウィ語のレクチャーを挟んでスローな曲から始めた後半は、パームワイン音楽からの影響が色濃いナンバーなども織り交ぜてより多彩なノリを示すと「さぁ、一緒に踊る時間です」と語りかけて観客にスタンディングを促し、激しい打楽器アンサンブルを伴った楽曲とともに怒涛のダンスタイムへ。ガーナの伝統的な音楽を応用した彼らならではの独創的なアレンジによる「月の沙漠」も披露して喝采を集めると、今年秋にリリースを予定している新作アルバムからイチ早く取り上げた「アミナ」を含むファンク色の強いナンバーを連発して場内を熱狂させた。




ガーナから初来日を実現させ、グルーヴ豊かにして多彩なハイライフ・サウンドで全国13会場に集まった観客を熱狂させたサントロフィ。多くのアフリカン・ポップスの源泉となったハイライフを現代に継承するバンドのリーダー格であるベース奏者のエマニュエル・オフォリとギター奏者のドミニク・クアーキに、今回のツアーでこだわった点やバンドの姿勢について話してもらった。


――初めて日本でツアーを行った感触はいかがでしたか?

 

エマニュエル:会場に来てくれた皆さんの反応もすごく良かったですし、制作に携わったスタッフの方々も仕事熱心で、様々なことを学ばせてもらいました。

 

――新旧のハイライフの多様なスタイルが盛り込まれたセットリストも秀逸でした。

 

ドミニク:普段フェスなどに出演する時とは少し違って、初めてハイライフやガーナの音楽を聴く人にも楽しんでもらえる内容にと考えました。最初はわりとスローな感じから始まって、どんどん盛り上げていって最後には誰もが踊り出すような。ライブではいつも、また来たいと思ってもらえる構成にすることを心がけています。

 

エマニュエル:例えばメンバー紹介の時にも、単に名前を呼んで終わりじゃなくて各メンバーが打楽器を演奏することで、そこにガーナらしさを加えて背景にある文化まで表現できるとか。今回のツアーでは、今までの自分たちでは思い付かなかったやり方を教えてもらえたのも有難かったし、感謝しています。

 

――サントロフィを結成した、いきさつを改めて聞かせてください。

 

エマニュエル:ガーナでは先代が継承・発展させてきたハイライフの流れが途切れてしまったところがあったので、私たちの世代でそれを引き継いでいこうというのが最初の動機でした。ハイライフは自国ではどこか〝お爺ちゃん世代が聴く音楽〟みたいなイメージになっていたけど、ジャマイカのレゲエや米国のブルースなどと同じくらいの力を持った音楽だと思っていたし、自分たちが演奏することでガーナの若者たちや世界中の人たちにその魅力を伝えていければと。

 

――ナイジェリアのフェラ・クティを創始者とするアフロ・ビートも元を辿ればハイライフから派生した音楽ですし、ハイライフは周辺国や欧米圏の音楽にも多大な影響を与えてきました。

 

エマニュエル:今回演奏した「アレイワ」という曲はハイライフの一種の〝クワウ〟が元になっているけど、アフロ・ビートの曲の70%かそれ以上はクワウが下敷きになっています。だから、世界中でアフロ・ビートを演奏している人達も、ハイライフを知ることで音楽の語彙力が増えると感じます。

 

――ライブの曲紹介で、ハイライフの様々な種類やリズムについて解説していたのも効果的でした。

 

エマニュエル:ガーナには16の州がありますが、それぞれに200種類以上のリズムがあります。今回取り上げた「月の沙漠」のアレンジには〝アバジャ〟と呼ばれる音楽を応用しました。

 

ドミニク:ガーナにはたくさんのリズム、メロディー、伝統的な楽器が存在していて、まさに音楽の宝庫なんです。ハイライフの様々なスタイルの原型にもそれらの音楽があります。今後もサントロフィとしてハイライフを広めていくことで、ガーナの文化を広め、ガーナの音楽が実は世界中のポピュラー音楽に影響を与えてきたハブ(中心)的な存在であることに、多くの人に気付いてもらえるようになればいいなと思っています。