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2022/02/24 ミュージックジャーニー

MIN-ONミュージック・ジャーニー~キルギス編~

雄大な山並みに囲まれた首都ビシュケクの夜景

 

皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、中央アジアに位置する天空の国キルギス共和国へ、駐日キルギス共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。

目次

1.バザールの活気あふれる中心地 首都ビシュケク

2.中央アジアの真珠 イシク・クル湖

3.今も残る遊牧民時代の文化と世界最長の詩「マナス」

4.キルギスの料理と伝統楽器

5.旅のおみやげ キルギスの白いはちみつ


キルギスは日本の約2分の1の大きさを持つ国土のうち、実に9割が標高1,500m以上に位置する山岳国です。6,000〜7,439m級の山々が連なる天山山脈やどこまでも広がる緑の高原、そして純白の氷河といった大自然に恵まれ、夜には澄んだ空気が美しい星空を演出してくれます。

 

バザールの活気あふれる中心地 首都ビシュケク

北部に位置する首都ビシュケクは、多くの人々が暮らす政治・経済・文化の中心地です。万年雪を頂く天山山脈の支脈「アラ・トー」の山々に囲まれており、近代的な都会でありながら、街のどこからでも雄大な山並みを望むことができます。

ビシュケクは、キルギスの国民酒である馬乳酒を作る時のかくはん器の名前に由来



ビシュケク市内には「バザール」と呼ばれる大小さまざまな市場があり、スーパーマーケットやショッピングセンターが増えている現在でも、変わらずに人々の台所として親しまれています。取り扱われる商品はとても幅広く、豪快に切り分けられた牛肉や羊肉にバリエーション豊富な乳製品、色鮮やかな野菜、日用品、衣料品など、品揃えも豊富です。市場の賑わい、香り、雑踏に圧倒されるかもしれませんが、そこでの経験は忘れられないものになります。

中央アジアの真珠 イシク・クル湖

ビシュケクから東に180km進むと、青く透き通った水質から“中央アジアの真珠”と呼ばれる「イシク・クル湖」があります。このエリアは冬になるとマイナス20℃以下の厳しい寒さに見舞われますが、イシク・クル湖は高い塩分濃度のため、一年中凍らない不凍湖として知られています。


透明度が非常に高く一日を通して色とりどりの湖面を楽しむことができる


一方、湖の北側と南側は、夏になると避暑地として湖水浴を楽しむ観光客で賑わいます。海のない内陸国のキルギスでは、まさにビーチさながらの活気となり、遠くの氷河を眺めながら泳ぐといったこの湖ならではの不思議な体験が味わえます。


今も残る遊牧民時代の文化と世界最長の詩「マナス」

キルギスには「馬は人の翼」ということわざがあります。これは、かつてキルギス人が大陸を馬にまたがって駆け巡っていた遊牧民時代の暮らしを表す言葉です。

鷹狩りは伝統的な狩りの手法として用いられてきた

 

ソ連時代に行われた強制的な定住化により、遊牧生活はほとんど見られなくなりましたが、現在でもさまざまな形で文化や生活の知恵が残っています。

そのうちの1つが、通気性と保温性に優れた移動式住居「ボズウイ」です。厳しい自然環境と共存し、馬や羊、牛、ラクダなどの家畜を育てながら移動を繰り返す遊牧生活において、機能的なボズウイは重要な生活の拠点となっていました。

現在では実際に住居として使用される場面はほとんどありませんが、夏用の野営地として用いられたり、冠婚葬祭や観光などで活用されたりと、今なお伝統文化として残されています。また、天井の最頂点は「トゥンドゥク」と呼ばれ、祖先の魂が宿る場所や和睦と団結を象徴する部位として扱われており、独特の模様はキルギス国旗のデザインにも使用されています。

キルギスにあるほとんどのボズウイは実は一つの村で生産されている


遊牧文化のもう1つのシンボルが、キルギス民族の英雄マナスとその子孫たちの戦いを描いた英雄叙事詩「マナス」です。マナスとは、散り散りになっていた部族をキルギスという一つの国にまとめた英雄です。 この叙事詩・三部作はキルギス人に永く伝わり、約50万節以上からなる膨大な物語で構成されています。ジャンルとしては英雄叙事詩に属し、キルギス文明の様々な時代についての物語を反映しています。マナスの叙事詩は、2013年12月4日にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

マナスはキルギス民族統合のシンボルとしてだけでなく、人間のあり方や養育を学ぶ教材として学校教育にも取り入れられるなど、現代においても重要な役割を担っています。

ここで、1998年に招聘しましたキルギス国立歌舞団「カンバルカン」による、英雄叙事詩「マナス」をお聴きください。



マナスの叙事詩は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録

キルギスの料理と伝統楽器

遊牧文化が根付くキルギスの料理には、やはり肉が欠かせません。ムスリムが多いため、豚肉を食べることはあまりありませんが、羊肉・馬肉・牛肉は広く好まれています。

スパイスで味付けをした羊肉や牛肉を串に刺して焼く「シャシリク」、米を肉と野菜とともに炊き上げる「パロー(プロフ)」、ひき肉を生地で包んだ「マンティー」、小麦粉でできた太麺をゆで、肉・トマト・玉ねぎなどを煮込んだスープでいただく「ラグマン」などが有名です。しかし、最も人気のある料理は「ベシュバルマク」で、遊牧民には伝統的に手で食べられてきたことから、現地の言葉で「5本の指」を意味する名がつけられています。茹でた肉を細かく刻み、練り上げた麺と玉ねぎのソースを混ぜ合わせて食べるのが一般的です。

特に羊はキルギス料理において重要な食材であり、肉や内臓は料理として、毛皮はフェルト素材として使われるほか、くるぶしの骨は子どものおもちゃにも活用されます。

高地のキルギスでは林檎や李、さくらんぼといった果物の栽培も盛んであり、杏の木は「コムズ」と呼ばれる撥弦楽器の素材にもなっています。コムズは杏の木でつくられた胴と3本の弦からできた素朴なつくりをしており、優しく軽やかな音色と、速弾きやアクロバット奏法をはじめとする多様な演奏法が特徴的です。

もう1つの特徴的な楽器が「テミル・コムズ」と呼ばれる金属製の口琴です。口にくわえて音を鳴らす体鳴楽器で、弁を弾きながら音を調節します。



ここで、2017年に開催しました「オルド・サフナ」の文化講演会から、コムズとテミル・コムズの2つの旋律で奏でる「馬の牧人」をお聴きください。



旅のおみやげ キルギスの白いはちみつ

ホワイトハニーは、キルギスの山々で育つサインフォインと呼ばれる花からミツバチが蜜を集めて生成されます。ホワイトハニーは美しい乳白色の見た目やくせがなく優しい甘さに特徴がありますが、栄養素も大変豊富で、健康維持に役立つ蜂蜜としても人気を集めています。

キルギスの幻の「白いはちみつ」は世界大会で最高峰の金賞を受賞

最後に、駐日キルギス共和国大使館が推薦する音楽家をご紹介します。

 

1.キルギス国立歌舞団「カンバルカン」

1988年に結成。1996年アメリカで開催された「フォークロア国際フェスティバル」で優秀な成績をおさめ、今やキルギス共和国を代表する歌舞団として、中央アジアのみならず、世界各国から高い評価を得ています。1995年民音主催の「シルクロード音楽の旅(9)」にシリア、パキスタンとの共演で講評を博し、1998年には「シルクロードの巨匠たち」公演で再来日を果たしました。






2.オルド・サフナ

1998年に映画監督のジャパロフ・シャミル氏により結成された民族楽器アンサンブルです。2017年に「キルギス・日本外交関係樹立25周年」を記念し、駐日キルギス共和国大使館の主催で来日し公演を行いました。



キルギスの人々にとって、伝統楽器コムズは生活に密着し欠かせないものです。2016年にキルギス共和国で開催された「第2回 世界ノマドゲームズ」で魅せたコムズを千人で合奏する様は、まさに圧巻です。ぜひ、その合奏をご覧ください。




皆さん、キルギス共和国への音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力、写真提供:駐日キルギス共和国大使館

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