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MIN-ONミュージック・ジャーニー~セルビア編~
Photo by Aleksandar Milutinović
皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、ヨーロッパ南東部のバルカン半島に位置するセルビア共和国へ、駐日セルビア共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。
セルビアはヨーロッパとアジアを結ぶ交通の要衝地にある国です。日本との交流はとても深く、本年2022年はセルビアと日本の友好関係樹立140周年にあたります。
・首都ベオグラードでセルビアの文化と歴史を学ぼう
・ドナウ川沿いの「ジェルダップ国立公園」で大自然を満喫しよう
・毎年15万人が訪れる「EXITロックフェス」やバルカン地域最大の音楽イベント「グチャ・トランペット音楽祭」の熱気に触れよう
・伝統舞踊「コロ」の華麗な足さばきを一目見てみよう
・セルビア料理「ムチュカリッツァ」を食べてみよう
東西の交差点 首都ベオグラード
セルビアには、ドナウ川とサバ川という2つの河川が横断しています。内陸国のセルビアにとって、2つの川はどちらも周辺国との関係を結ぶ重要なルートとなってきました。
そんな2つの河川の合流点に位置し、古くから文明の交差点としての役割を果たしてきたのが首都ベオグラードです。
Photo by Andrej Nihil
活気あふれる中心街
現在のベオグラードは、国立劇場や国立博物館、芸術アカデミー、ベオグラード・フィルハーモニー管弦楽団などの文化施設やイベントの中心地となっています。穏やかな大陸性の気候に恵まれており、美しい街並みや建造物とともに、四季折々の景色を楽しめるのが魅力です。
また、サバ川を隔てたエリアに位置する新市街は、第二次世界大戦後に建てられた近代的な建築物や大型ショッピングモール、レストラン、カフェが集まり、多くの人で賑わう暮らしの拠点となっています。
Photo by Zoran Spremo
カレメグダン公園(ベオグラード要塞)
街でもっとも古い文化的建造物「カレメグダン公園」は、別名ベオグラード要塞とも呼ばれ、堅固な外壁は紀元前から続いた戦いの歴史を象徴しています。しかし、現在ではドナウ川とサバ川をもっとも美しく見下ろせる人気の観光スポットとして、人々の心を和ませる役割を担っています。
また、要塞は夜になるとライトアップされ、そこから生み出される幻想的な風景も人気の秘密です。さらに、公園内には自然博物館や軍事博物館なども併設されており、セルビアの文化と歴史を感じられる重要な拠点にもなっています。
豊かな自然とアクティビティ
セルビアの大きな特徴は、活気あふれる都市と心落ち着く地方エリアの鮮やかなコントラストにあります。手付かずの自然であふれた田園風景、空気の澄み渡る高原エリアなど、国内には豊かな自然を味わえるスポットが数多くあります。
サイクリングや登山、ラフティングといった野外アクティビティを楽しみたい方、ゆったりとウォーキングやバードウォッチングを楽しみたい方、豊かな森に囲まれた温泉地でリフレッシュしたい方など、あらゆるニーズに応えてくれるのがセルビアの大自然です。
そして、セルビアの自然を象徴する存在が、国内にある5つの国立公園です。なかでも64,000ヘクタールもの広大な面積を有する「ジェルダップ国立公園」は、ドナウ川の雄大な景色と考古学的価値を持つ遺跡、息を飲むような峡谷が出迎えてくれる自然の宝庫です。
Photo by Branko Radičević
ここで、セルビア国立観光協会が制作した観光映像をご覧ください。
セルビアの音楽文化
セルビアは、年間を通して音楽祭や演劇祭、映画祭などが多数開催される文化大国でもあります。特に、セルビア北部に位置する第2の都市ノビ・サドは、2021年に欧州文化首都(国際間の相互理解を深めるために毎年EU加盟国から選ばれる文化都市)にも選出されています。
Photo by Aleksandar Milutinović
ここでは、毎年7月になると、「EXITロック・フェスティバル」と呼ばれる東南ヨーロッパ最大の音楽フェスが開催されます。ペトロパラディン城を舞台に、ロックやエレクトロニック、ヒップホップ、R&Bなどの多彩なアーティストが共演し、毎年15万人もの観客が訪れる世界的に人気のイベントです。
ここで、2021年に開催されたフェスティバルの様子を映像でお楽しみください。
また、毎年8月には、セルビア中央に位置する町グチャで「グチャ・トランペット音楽祭」が行われます。普段は静かで穏やかなグチャの街中も、このときばかりはブラスバンド演奏による熱気と伝統料理の香りで包まれ、賑やかな舞台へと姿を変えます。開催期間中は、国内外から100万人近くの人々が訪れ、迫力あふれる演奏を楽しみます。
もう1つ、セルビアの音楽文化を語るうえで欠かせないのが、2017年にユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統舞踊「コロ」です。コロとは「輪」を意味する言葉であり、グループで手を繋いだり、お互いの腰紐や肩を掴んだりして踊る円舞です。
素早く華麗な足さばきが特徴的で、腰から上をほとんど動かさず、グループでピッタリと揃ったステップはまさに神業です。2拍子の軽快な伴奏に合わせて舞う華やかで、伝統的な刺繡がほどこされた民族衣装も魅力であり、現在でもお祭りや結婚式などで踊られています。
ここで、駐日セルビア共和国大使館推薦の「セルビア国立民族合唱舞踊団コロ」による華麗な踊りをお楽しみください。
<セルビア国立民族合唱舞踊団コロ>
セルビアの伝統的な歌や舞踊などを収集・保存することを目的として1948年に設立。現在までに、世界各国で計6000回以上の公演を開催し、延べ1200万人が鑑賞。日本でも1959年を皮切りに、4度にわたって公演を開催している。
コロがユネスコ無形文化遺産に登録された翌年、2018年にはセルビアからさらにもう1つの無形文化遺産が登録されました。それが、「グスレ」と呼ばれる伝統楽器を弾きながら歌唱される叙事詩です。
グスレは一本弦の弦楽器であり、演奏者は楽器を膝の上に立てるか膝の間に挟み、弓を用いて音を鳴らします。楽器の音程を演奏者の歌の声域にピッタリと合わせる独特の演奏方法が大きな特徴です。
それでは、実際にグスレが演奏されている様子を映像でご覧ください。製作風景や若い世代へ継承されていく様子も紹介されています。
また、日本の童謡「七夕様」は、1960年代にセルビアに伝わり、現在は「Šušti, šušti bambusov list」というセルビアで最も親しまれている童謡の一つとして小学校で教えられ、合唱団でも歌われています。ここでは、セルビア日本友好140周年記念としてセルビア大使館が主催したコンサートより、薄井信介氏(チェロ)、齋藤友紀氏(フルート)、金益研二氏(作編曲・ピアノ)がセルビア語と日本語で披露した「七夕様」をお聴きください。
©Embassy of Serbia
旅のおみやげ 「ムチュカリッツァ」と「アイバル」
「ムチュカリッツァ」とは、グリルした豚肉にパプリカとトマトペーストを加えて煮込んだセルビアを代表する料理の1つです。セルビア料理は、トルコや中央ヨーロッパなどの影響を受けながら、独自の食文化として発展していきました。
このムチュカリッツァもセルビア独自の地元料理ですが、2021年に日本で初めて、松原食品株式会社(福岡市)からレトルト食品として発売されました。セルビア料理が日本で製造・販売されるのは、これが初めてのことです。
「アイバル」とは、パプリカをベースにナスやトマトなどの食材を加えて煮込んだものであり、瓶詰めで市販されている身近な調味料(スプレッド)です。セルビアのパプリカは甘味が強く味わいも濃厚で、現地では特に重要な食材として扱われています。
そのパプリカの旨味がギュッと凝縮されたアイバルは、肉料理やパスタに合わせたり、チーズやベーコンと合わせてパンに挟んだりと、さまざまな場面で重宝されます。また、調味料としてだけではなく、そのままサラダとしても食べられることから、主役にも脇役にもなれる汎用性の高さが魅力です。
セルビアには、他国の言語に翻訳できない料理がまだまだ存在しています。そのほかの料理も詳しく知りたい方におすすめなのが、セルビア大使館秘書で料理講師でもある長門ティヤナさんの動画チャンネルです。
お家で挑戦できる料理も映像でわかりやすく紹介されているので、気になる動画を探してみてはいかがでしょうか。
セルビア大使館推薦の音楽家
最後に、駐日セルビア共和国大使館が推薦するセルビア出身の音楽家の演奏をお楽しみください。
1.「Pašona kolo」
<ネマニャ・ラドゥロヴィチ>
1985年生まれ。バイオリニスト。ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団や東京交響楽団など世界有数のオーケストラとも共演。超絶技巧の演奏と豊かな表現力はクラシック音楽界に旋風を巻き起こし、日本にもファンクラブや彼の名を冠したバー(横浜)がある。
2.「In Corpore Sano」
<コンストラクタ>
シンガーソングライター。国の代表として、2022年5月にイタリアのトリノで開催されたユーロビジョン・ソング・コンテストに出場。彼女の「In Corpore Sano」が40作品中5位に入賞し、芸術性の高い作品に贈られる芸術賞も受賞。ヨーロッパ各地で人気を集めるアーティストの一人。
3.「Navali Se Šar Planina」
<テオフィロヴィッチ ラトコ、ラディシャ>
双子の歌手。セルビアの伝統的な音楽や詩をアカペラデュエットで表現している。ヨーロッパや日本、アメリカなどの主要都市で数多くのコンサートを開催。大阪国際芸術祭などの世界的なフェスティバルでも演奏をしている。
4.「Aksion esti」
<ディヴナ・リュボイェヴィッチ>
ベオグラード出身。歌手、兼、正教会の聖楽をさまざまな言語で表現する指揮者。セルビア最古の合唱団であるベオグラード合唱協会に入団し、同団体最年少の指揮者に就任。1991年に、スピリチュアルミュージックの合唱団兼スタジオ「メロディ」を設立し、ヨーロッパやアジア、北アフリカで600回以上の公演を開催している。
Photo by Predrag Despotović
皆さん、セルビアへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。
協力、写真提供:駐日セルビア共和国大使館、セルビア国立観光協会
Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-