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2021/02/17 ミュージックジャーニー

MIN-ONミュージック・ジャーニー~コソボ編~

民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、バルカン半島の中心に位置する多民族国家コソボへ、駐日コソボ共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。

コソボは、2008年に誕生したヨーロッパで最も若い国で、2021年2月17日、独立13周年を迎えます。
20世紀末のベビーブームにより、人口約180万人のうち、35歳以下の若年層が約70%を占め、国際社会のなかで若い世代が知的国家の礎となり、国の飛躍的な発展に貢献しています。

はじめに、コソボ共和国独立記念日を祝して、独立10周年の際に作成された国歌斉唱の映像を国内の美しい景色とともにご覧ください。

コソボ共和国国歌「ヨーロッパ」


つづいて、今回のためにコソボ共和国大使からいただいたメッセージ映像をご覧ください。

独立記念日のご挨拶
駐日コソボ共和国大使館エニス ジェマイリ臨時代理大使 



活気にあふれた商業都市、首都プリシュティナ

首都プリシュティナは、1999年以降、国際機関や商業施設、住宅地などが誘致され、コソボの政治や経済、文化の中心として発展を遂げ、今では、全人口の約3割が暮らす大都市となっています。街の歴史は古く、1342年、ビザンチン帝国の皇帝ヨハネス6世が、この地域を“村”と呼んだ記述が残っています。

市街地には、2008年2月17日、コソボが独立を宣言した際に造られた「ニューボーン・モニュメント」が設置されています。英語の大文字で示されたニューボーンには“生まれたばかりの、新生の”という意味があります。当初は淡い黄色一色に染められていましたが、毎年、様々なテーマやメッセージを込めて塗り直され、モダンな街をさらに彩る観光名所の一つとなっています。

ニューボーン・モニュメント


ユニークな構造で知られるコソボの国立図書館


新市街の中心部には、マザー・テレサ大通りと呼ばれる広々とした歩行者天国があります。おしゃれなカフェやレストランが軒を連ね、夜になると同僚や友人、恋人とのひと時を過ごす若者たちの賑やかな姿が見られます。


2010年、マザー・テレサ大通りの南端に建設された「マザー・テレサ大聖堂」



活気のあるプリシュティナのメインストリート


カフェで楽しむ若者たちと人気のカフェ・マキアート


プリシュティナで開催されたデュア・リパのコンサート


郊外にあるリピアン地区は、古代ローマ帝国時代の都市の面影を残す「ウルピアナ遺跡」が発見された場所です。3世紀から4世紀にかけて興隆したこの都市は、518年に起こった大地震によって、ほとんどの建物がその形をなくしました。後に、ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスが再建し、ユスティニア・セグンダと改名されました。現在は、ウルピアナ考古学公園として整備され、当時の街の様子を彷彿とさせる重要な遺跡が一般公開されています。


ウルピアナ考古学公園

 

市内から約20㎞東に位置するムラモール村の近くには、「ベア・サンクチュアリ・プリシュティナ」と呼ばれる、国内で保護された熊が暮らす国立公園があります。2013年に造園され、広さ16ヘクタールに及ぶ自然豊かな敷地には、約20頭の熊たちが生息しています。園内には、およそ自然のなかで暮らす熊の生態が見学できるガイドツアーや、緑の木々に囲まれ地元料理を堪能できるレストラン、また若い世代に向けた動物の福祉と環境保護について学べるプログラムなどが用意されています。

大自然の中でのびのびと暮らす熊(ベア・サンクチュアリ・プリシュティナ)

2004年に世界文化遺産に登録された“コソボの中世建造物群”の一つ「グラチャニツァ修道院」

 

歴史漂う美しい都市プリズレン

コソボ南部にある第2の都市プリズレンは、コソボ全域とバルカン半島西部の中で最も古い街に数えられ、かつては内陸と海岸を結ぶ貿易の拠点として栄えました。シャル山地とパッシュトリク山を背景に、まるで絵に描いたような幻想的な景観は、“物事の起源・美しい街”と称されています。市内には、15世紀のオスマン帝国時代に造られた「ウラグリ」と呼ばれる石橋や、旧市街の中心に建つ極めて美しいモスクとうたわれる「スィナン・パシャ・ジャーミア」をはじめ、65以上の史跡と、600以上の貴重な歴史的建造物が点在しています。

ウラグリとスィナン・パシャ・ジャーミア


プリズレンの南西部に位置するプリズレン城(城塞跡)は、紀元前2000年頃の青銅器時代、ここに原始社会が存在していたことを立証する、考古学的にも重要な発掘調査が行われたところです。市のシンボルともなっている要塞の頂上からは、プリズレン市街やパッシュトリク山、ビストリカ渓谷など、壮大な景色を展望することができます。

プリズレン城(城塞跡)

またプリズレンでは、一年を通して、多くのお祭りやイベントが開催されています。
なかでも、ドキュメンタリー映画祭「ドクフェスト」は世界に知られ、ヨーロッパ最大の国際フェスティバルの一つに数えられています。今年で20周年を迎える祭典は、世界中から厳選された200を超える作品を市内の映画館や野外会場で上映するとともに、「ドクナイツ」と呼ばれるトップアーティストによるコンサートや写真展、ディベートなどが行われ、街中が熱気に包まれます。


ドクフェストの様子

 

コソボの食文化と生活

コソボの食文化は、変遷する歴史のなかで周辺地域の影響を受けて発展し、特に、肉やペイストリーを用いた料理が古くから伝わっています。なかでもバクラサルメ(ニンニクと塩を含んだヨーグルトをのせ伝統的な調理法で焼きあげたホウレン草入りのパイ)や、サルメ・メ・フィエータ・テ・ルシート(挽肉、赤ピーマン、米を葡萄の葉で巻いた郷土料理)が人気で、日本旅行業協会が厳選した「美味しいヨーロッパ100選」にも選ばれました。



コソボ南西部には、貿易と商業の街として栄えた古都ジャコバがあります。ここにはオールドバザールと呼ばれる昔ながらの商店街があり、この街の経済を支えてきました。この地域の最大の魅力として紹介される国内最古のバザールは、隣接するユニック地方やアルバニアと国境を接するジャコバ高原の人々の生活の糧にもなっていました。1999年の紛争で街の約8割が破壊されましたが、現在のメインストリートは、以前と同様に修復され、バザール周辺にはレストランやバーなどが立ち並び、多くの若者で賑わっています。

ジャコバのオールドバザール

豊かな四季をもつコソボのホワイトドリーニ渓谷

各地で継承される固有の伝統文化

コソボの地方には、400を超える特色豊かな民族衣装や工芸品、また特有の生活習慣が受け継がれています。プリズレン南部のゴラン地方には、結婚式の朝、花嫁に特異な化粧を施す古くから伝わる儀式があります。白粉を塗られた花嫁の顔面に、金色の染料で、線や円の幾何学模様を描きます。そして朱と青でさらに点や線を入れていきます。金色は“豊かさ”、円の模様は“夫婦円満”、朱は“子宝”、青は“健康”を表します。ドレスアップのあと、花嫁は花婿に会うまで目も開けられません。この儀式は、この地方にのみ伝わる独特の慣習です。


コソボの工芸品フィリグリー細工は、金と銀を糸のように加工し、様々な模様を編み出して細工する伝統的な技法です。その歴史は古く、古代エジプトにまでさかのぼり、15世紀頃にコソボに伝えられたとされます。世界の細工職人にも広く知られ、プリズレンでは、金の縒り糸で織られた上質な絹を使った伝統衣装も有名です。

フィリグリー細工


プリズレンのハス地方ジョナイ村では、1976年より毎年5月、「ハシイエホン」という祭典が開催されています。コソボ全土から、鮮やかな衣装を身に包んだ民族アンサンブルが集結し、ダンスや演奏を繰り広げます。衣装の展示や郷土料理も楽しめ、多くの人々で賑わいます。

ハシイエホンに出演したアンサンブル

 

コソボの民族音楽は、考古学の研究によって、紀元前5世紀より周辺地域の音楽とともに発達したといわれています。国内で発見された石絵には、楽器を手に持つ歌手の姿が描かれており、単一弦楽器「ラフタ」は、古来からのルーツを探る重要な伝統楽器の一つです。

コソボの伝統衣装と伝統楽器“ラフタ”

 

ここで、コソボで最初の芸術文化機関の一つ「ショタ」のパフォーマンスをご覧ください。

「ショタ」は民謡や伝統舞踊などの保存とさらなる発展、新しい形式の民族芸術を探求するために1950年に設立された国立アンサンブルで、コソボの独創的な衣装や、本場の音楽、エキゾチックなダンスは世界中から称賛されています。それでは、お楽しみ下さい。

こちらからご視聴いただけます。




コソボの独創的な衣装

コソボの音楽シーンを彩る音楽家

コソボ出身の音楽家は世界中で活躍していますが、中でもリタ・オラやデュア・リパ、エラ・イストレフィは、ポップミュージック界の大スターとして、世界中で人気を誇っています。

写真左からリタ・オラ、デュア・リパ、エラ・イストレフィ

最後に、駐日コソボ共和国大使館より、日本の皆様にぜひ聴いていただきたいと、様々なジャンルの音楽をご紹介いただきました。どうぞお楽しみください。

<ジェリコ>
1997年にプリシュティナで結成されたロックバンド。 コソボとアルバニア北部地域の特徴であるロックやエレクトロニック、アルバニアの伝統音楽等をミックスした曲調が特徴的で、すべての曲で社会問題を扱っている。


  1. 「恋人たちの歌」
    こちらからご視聴いただけます。


<ストリングストリング>
プリシュティナ出身の有名な音楽バンド。クラシックや映画のサウンドトラック、アルバニア民謡をはじめ、幅広いレパートリーを持ち合わせている。

2.「結婚」
  こちらからご視聴いただけます。

<トロイ>
1990年にプリシュティナで結成されたヘビーメタルバンド。1994年、世界一の音楽フェスとも言われる「ブームフェスティバル」でベストロックバンド賞に輝き、その後も、様々な賞を受賞している。

3.「ワン」
  こちら
からご視聴いただけます。


<エスニック・プラグ>
2014年には、コソボで大人気となった映画「The Hero」で彼らの音楽が起用され、高い評価を得ている。

4.「目を開けて」
  こちら
からご視聴いただけます。

<オフチェストラ>
2011年にコソボで結成された音楽グループ。 2013年、“Abon”という曲でトップフェストに初出場し、
ベストグループ賞を受賞している。

5.「イエナパ」
  こちら
からご視聴いただけます。



<ジプシーグローブ>
2010年に結成。ジャズやレゲエ、ファンクなどの音楽的要素を取り入れ、コソボで唯一本格的なバルカン・ロマーニ音楽を演奏するバンド。多様性や人権、平和に深い関心を持つメンバーのカリスマ的でエネルギッシュな演奏が人気を博している。

 

6.「ジェレム ジェレム -チャイエ シュカリエ、コソボからのポストカード」
  「I went, I went, Sweat girl, Postcards from Kosovo」
  こちらからご視聴いただけます。


2016年、リオデジャネイロオリンピックで、コソボに初めて金メダルをもたらした柔道家マイリンダ・ケルメンディ氏のパレードの様子です。次のオリンピックで、再び金メダルを獲得することが期待されています。

皆さん、コソボへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力、写真提供:駐日コソボ共和国大使館

Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-

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