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History of MIN-ON.

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Vol.1  民音・指揮者コンクールの歴史
外山雄三審査委員長インタビュー

参加者を激励する、外山雄三審査委員長(2006年)
参加者を激励する、
外山雄三審査委員長(2006年)

―――以前、コンクールで落選した受験者に、外山先生がアドバイス、というか質問を受けてくださっており、若い方への真摯な姿に感動したことがありました。
本人が聞くかどうかは別にして、何かアドバイスをしてあげたいと思っている。指揮者というのは孤独なもので、なかなかアドバイスを受ける機会がない。
例えば楽器の演奏家であれば、友達を前に演奏をすれば、上手いかどうかの感想は聞ける。
でも、指揮者が「これからベートーヴェンの曲を振るから見ていて」と言っても、見ている側には何がどう違うのかもわからないし、どう感想を言っていいのかもわからない。
でも、審査委員として客観的に見ていて、「あなたがこのように演奏したいのはわかるし、勉強をしてきたのもわかるが、その腕の動かし方ではオーケストラの団員に伝わらないよ」とか、ちょっとしたアドバイスをさせていただいている。
後で、そういうことを言われたな、と思い出してもらって、それが少しでもその参加者の心の片隅にでも残っていれば、本人の為になることもあるのだと思う。
前に私も留学中に師事した先生に、腕の動かし方が硬いと言われたことがある。そんな硬い腕の振りでは、硬い音しか出してもらえないと教えていただいたことは、今でも鮮明に覚えている。

前回コンクール表彰式(2006年)での、入賞、入選者と審査委員。中央に、外山雄三審査委員長、第二位入賞の川瀬賢太郎氏
前回コンクール表彰式(2006年)での、入賞、入選者と審査委員。
中央に、外山雄三審査委員長、第二位入賞の川瀬賢太郎氏

―――指揮者になるために、何を勉強したらいいですか?
また、指揮者とはオーケストラの中でどういった仕事をする人なのでしょう?

まず、譜面を読めること。
それは、ただ単に楽譜が読めるだけでは、読めたとは言えない。譜面を見て、様々な楽器の奏でる音全体が聴こえてきて、初めて読めたといえる。
あと、楽譜の中にあるメトロノームの速度表示も、それだけが正しいのではない。
例えばその日の気温や湿度によって、楽器の鳴り方も変わるので、それに合わせた指揮ができるかどうか。
あとは、その日のオーケストラの気持ちによって、今日はゆったり演奏しようとか、早めにしようとか判断していくのも、指揮者の仕事である。

実は、オーケストラの団員たちも指揮者の気分や精神状態には敏感で、あるオーケストラのコンサートマスターは、指揮者が指揮台に歩いてくる靴音で、その日の指揮者の気持ちがわかると言っていた。
なので、私はわざと、ゆっくり演奏したい時でもせかせか歩いてみたりして、不意をついてみたこともあった(笑)
時には、指揮者が指揮台に立つだけで、今日はこういった演奏をしたいのだとわかる関係も出来上がる。日本で言ったら、朝比奈隆先生と大阪フィルのような関係。あとは、カラヤンとベルリンフィルなど。
カラヤンは、最終的にはベルリンフィルを追い出された、ということになっているが、楽団全員から嫌われる、なんてことは絶対にない。カラヤンが去る時、悲しんだ団員は少なからずいたと思う。
また、指揮者はオケに嫌われてこそ一人前、とも言われる。でも、そうしたら仕事にならないが…(笑)

また、コンクールの課題曲も、これは若い指揮者が勉強した方がいいと思う曲を選ぶようにしている。
最近はまず、シンフォニーオーケストラの指揮者というのが一般的になってしまったが、元々は指揮者というのはオペラを振ることが第一だった。
ヨーロッパでは、指揮者を目指す時、オペラハウスの練習ピアニストとして入った。練習ピアニストとは、オペラ歌手の練習に付き合うのだが、全体の内容を知らないとできない。
次に、本番前の練習で時々指揮できるアシスタントになり、本番前に歌手たちに、いろいろ注文をつけるポジションになる。
例えば歌手たちに、その役柄の生い立ちや境遇、今何歳なのか、どういう状況でこのシーンに登場するのかなど伝えていく中で、一人ひとりの動きや表現方法を作り上げていく。そういったことを通し、そのオペラの背景などを知ることで、指揮で音を表現できるようになったものである。これは、ヨーロッパの歴史にも関係があると思う。何故かと言うと、ヨーロッパではオペラの題材は誰もが知っていて、演目や登場人物のことを聞くだけで、誰でも答えられるものだから。

―――背景や人物描写などを知ることによって、より指揮に表現力が生まれるんですね。指揮者はそういうことまで勉強した方がいいのでしょうか?
そこまで出来ればいいと思うが、なかなか今の人はやっていないのでは。でも、そういったことも勉強してみることで、さらに深みを増していけるのではと思う。
あとは、いろんな指揮者の演奏を見る、そして聴くことである。自分が好きな音楽家だけでなく、嫌いな音楽家の演奏を聴くことも大事である。色々な音楽に触れることで、自身をより高めていくことが出来ると思う。

―――ありがとうございました。今年は第15回目を迎える指揮者コンクールが10月26日から第一次予選が始まり、11月1日に本選を迎えます。
今年秋に開催される指揮者コンクール。
指揮者による音楽の違いを是非聴き比べて欲しいし、新しい才能の誕生を楽しみにして欲しい。

過去の入賞入選者の活躍(pdf)

外山 雄三(指揮・作曲家)Yuzo Toyama Conductor
外山 雄三(指揮・作曲家)
Yuzo Toyama Conductor
1931年東京生まれ。東京音楽学校(現在の東京芸術大学)で作曲を学び、在学中の1951年「クラリネット、ファゴット、ピアノのための<三つの性格的断片>」で第20回音楽コンクールに入賞。1952年卒業と同時にNHK交響楽団に打楽器練習員として入団。1954年には指揮研究員となり、1956年9月にNHK交響楽団を指揮してデビュー、以後各オーケストラに数多く客演を開始。1958年から1960年にかけてウィーンに留学。1960年NHK交響楽団の世界一周演奏旅行に同行し、ヨーロッパ各地12ヶ国で演奏。指揮者としてばかりでなく自作の「管弦楽のためのラプソディー」によって作曲家としてもその名をひろめた。
その後1964年、1966年、1979年のNHK交響楽団海外公演を指揮、1979年にはNHK交響楽団正指揮者に就任した。1985年にはニューヨークで開催された国連40周年記念コンサートにNHK交響楽団とともに出演、全世界に放送された。国内では大阪フィル、京都市響、名古屋フィル、神奈川フィル、仙台フィルの要職を歴任。海外でも日本を代表する指揮者・作曲家として、たびたびオーケストラや国際コンクールなどに招かれている。オペラ指揮の分野でも、その緻密な音楽作りが高く評価されており、1999年三善晃作曲「支倉常長<遠い帆>」、2006年一柳慧作曲「愛の白夜」各初演での圧倒的名演が記憶に新しい。これまでに作曲した作品はオペラ、バレエ音楽、ミュージカル、劇音楽、交響曲、協奏曲、管弦楽曲、室内楽曲、歌曲、合唱曲など多岐にわたる。1963年第12回尾高賞、1981年第1回有馬賞、1983年第14回サントリー音楽賞、1999年文部大臣表彰、2000年第48回尾高賞を受賞。現在、NHK交響楽団正指揮者を務めている。愛知県立芸術大学客員教授。

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