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【パンゲア・トリオ・ベルリン】マレーネ・イトウ インタビュー

クラシック音楽界をリードし続けるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。その第2ヴァイオリン首席奏者、マレーネ・イトウを中心に結成されたピアノ・トリオ「パンゲア・トリオ・ベルリン」が、日本ツアーを開催した。太古の超大陸パンゲアの名を冠した彼らは、「音楽で世界を一つにつなぎたい」という願いを込めて演奏する。今回のツアーでは、ドヴォルザーク(チェコ)、ブラームス(ドイツ)、ラヴェル(フランス)のピアノ三重奏曲と、国際色豊かなプログラムを披露した。ツアー中のマレーネ・イトウに、トリオ結成の経緯や、音楽への思いを聞いた。
——今回の来日ツアーは、鹿児島・熊本・愛媛・徳島・東京・静岡2都市・埼玉と全国8カ所を巡りました。日本の聴衆の反応はいかがでしたか?
どの会場でも温かく迎えていただき、演奏に集中して耳を傾けてくださるのを感じました。特に徳島公演では、スタンディングオベーションが起こり、印象深い瞬間となりました。お客さまの中には、クラシック音楽になじみのない方もいらっしゃいましたが、だからこそ、そうした場所で室内楽を届けられたことがうれしかったです。
——室内楽は小規模な会場で演奏されることが多いですが、東京では1800席の文京シビックホールでの公演でした。大ホールでの演奏はいかがでしたか?
リハーサルではホールの響きを確かめながら演奏しましたが、本番ではお客さまが楽しんでくださっているのが伝わり、私たちもリラックスして演奏できました。室内楽でも大ホールで演奏することはありますが、会場の響きに合わせたアプローチが必要です。文京シビックホールは、繊細な音色でも遠くまでクリアに届く素晴らしいホールでした。友人が客席の一番後ろで聴いていたのですが、「細かいニュアンスまでしっかり伝わった」と言ってくれました。

——パンゲア・トリオ・ベルリンは2023年に結成されました。メンバーとの出会いを教えてください。
私たちはベルリンで出会いました。ピアニストのヤニックはパリとボストンで学び、現在はベルリンを拠点に活動しています。彼との最初の出会いは、友人が出演する室内楽コンサートでした。その後、ベルリン・フィルの教育プログラムでピアノ三重奏を演奏する機会があり、彼に声をかけました。当時のチェリストが引退し、その後継者としてウラジーミルに加わってもらいました。
そして、ある室内楽コンサートでラフマニノフの三重奏曲を演奏したのですが、その最初の一音を奏でた瞬間、「この3人で続けたい」と直感しました。音楽に対する考え方やアプローチが近く、互いを補完し合える関係だったのです。ヤニックは自由で外交的な性格で、音楽にもその個性が表れています。一方、ウラジーミルと私は細部にこだわる研究肌。私たちは異なる個性を持つ3人ですが、熱心に音楽作りを探究し、自由で新しい表現ができるトリオなのです。
——ベルリン・フィルの活動とトリオのツアーを両立されています。モチベーションの源は?
シンプルですが、音楽を演奏することが生きがいです。オーケストラでは、一つの大きなグループで音楽を作り上げます。一方、室内楽は個々人の役割が大きく、それぞれの表現力が試される場でもあります。その経験がオーケストラでの演奏にも生かされますし、両方を経験することで、より豊かな音楽表現が可能になると感じています。
また、オーケストラがオフの時は室内楽の活動だけでなく、後進の指導にも力を入れています。多くの人と交流することが、私にとって大きな刺激となり、それがまた演奏にも反映されていくのです。
——パンゲア・トリオ・ベルリンの今後の展望を教えてください。
ベートーヴェンやブラームスといった一人の作曲家に焦点を当てたプログラムを企画することもありますが、ツアーでは異なる国やスタイルの作品を選び、幅広い音楽を届けたいと考えています。クラシックの伝統的なレパートリーに加え、今後はブラジルやアメリカの作品、そして日本の武満徹の音楽にも取り組んでいきたいですね。世界中の多様な音楽を演奏し、より多くの人に届けられることを楽しみにしています。