■ Rajaton フィンランドを代表する美しく世界的なハーモニー

楽器を使わずに人の声だけで音楽を作っていく「アカペラ A cappella」。アカペラ自体はクラシックから現代音楽まで幅広く含みますが、その中でもとりわけ、マイクなどの音響機材を使いながら、1人1パート、かつ、3名から8名くらいの少人数で演奏されるスタイルを「コンテンポラリーアカペラ（Contemporary A cappella）」と呼んでいます。その世界的なグループのひとつが、本公演の主人公「Rajatonラヤトン」です。

「ラヤトンRajaton」はフィンランドを代表する、男性2名女性3名の計5名によるアカペラグループです。結成は1997年。ベースボーカルのユッシさんが、当時ロックバンドでドラマーとして活動する傍ら（びっくりですね）、合唱用の譜面を書き、それを、高校時代の合唱仲間や、別の室内合唱団のメンバーに声をかけ、一緒に歌う機会を作りました。それがRajatonの誕生です。

「Rajaton」という名前は、英語で訳すと「Boundless（限りのない、無限の）」という意味。文字通りに、「限界を超えて垣根のない音楽世界を作っていきたい」という願いが込められています。彼らの扱う音楽はジャズやポップスのカバーからオリジナル曲、クラシック、フィンランドの民謡や民族音楽など多岐にわたります。良い音楽、演奏したい音楽をジャンルを問わず取り上げていくというのが、彼らのスタンスです。

すでに結成26年。一方で、この数年間は新型コロナウイルスの影響で音楽活動が制限されました。メンバーのソイラさんにその間の様子について話を伺いました。コンサートは中止や延期になり、ひたすら家に籠る毎日。しばらくはメンバーでさえ、直接会ったりリハーサルもしたりできなかったそうです。オンラインで一緒に歌えないか、いろんなプラットフォームを試しても「音質」や「遅延」の問題でなかなか難しかったとのことです。ただ、とりあえず、週一回のオンラインでのミーティングは継続しながら、作編曲はコンスタントに続けていました。

一方で、オンラインを活用した「音楽プロジェクト」を立ち上げて、バーチャルコンサートやファンミーティングなどを行ないました。それらの経験は、ここ最近になってコンサートを再開するにあたって、大きな成果につながっていると聞きました。今日のコンサートはその辺にも注目ですね。

さて、今回のコンサートに対する意気込みも伺いました。「親愛なる日本の皆様の前で歌えることは本当に喜びです。ファンの方のみならず、まだ私たちのことを知らない初めての皆さまにも楽しんでいただけるような内容を考えています」「もしかしたら、皆さまが驚くような日本語の曲も秘密のレパートリーとして歌うかもしれませんよ。楽しみにしていてくださいね」歌える喜びが溢れ出るような、そんなステージが繰り広げられることでしょう。

コロナによるいろいろな制限がひと段落し、世界的にも経済活動が元に戻りつつあります。フィンランドにおいても、徐々に音楽活動が盛んになっており、Rajatonは今回の日本ツアーのあとは、フィンランドでクリスマスツアーが続きます。そして聞くところによると、来年はシンフォニーオーケストラとのコラボレーションも復活！ABBAやQueenの曲を取り上げたプログラムが、来年フィンランドで行われる他、なんとアメリカでも行われることになっているそうです。このプログラムをぜひ日本でもできたらいいなとおっしゃっていました。

日本との関わりも深いRajaton。2005年には「愛・地球博」にてフィンランド代表として演奏。また、NHKスペシャル「世界里山紀行『フィンランド・森とともに生きる』」（2007年）、映画「森聞き」（2011年／フィンランド・オウル国際青少年映画祭招待作品）で、彼らの作品が使われています。 フィンランドの空気を感じさせる美しく透き通ったハーモニー。
さぁ、これから開演です。ご一緒に楽しみましょう。

［アカペラグループ The Idea of North（オーストラリア）／鱧人（日本）メンバー］
北村嘉一郎