〜解説〜
img1 フランスのピアニストでオーケストラ・リーダーのジル・ガンブスがまた日本にやって来る!・・・あの初の民音公演の成功(2002年3月)から1年弱、まだその記憶が鮮明な時期の矢継ぎ早の来日です。振り返れば、デビューしたて、脂がのり始めた時期などのアーティストが1年と間をあけずに来日するのはよくあること、ポール・モーリアも、リチャード・クレーダーマンも過去にそんなペースで公演を行ない、のちにスターになっていったことを思えば、ジル・ガンブスも・・・と期待して当然でしょう。
 
これまで、ポール・モーリアの良き相棒、ポール・モーリア・サウンドの真の創造者、などポール・モーリアとの関連で紹介されることが多かったジル・ガンブスが“独り立ち”しても十分に腕と魅力を兼ね備えていることを証明したのが前回のステージでした。あの時は故カーメン・キャバレロのレパートリーを中心にしたプログラムでしたが、今回はそのポイントをフレンチ・メロディーにも置いて、さらにエレガントなジル・ガンブスの持ち味が発揮されるはず、楽しみです。
 
ジル・ガンブスは1958年マルセイユ生まれといいますから、これまでポール・モーリアやフランク・プゥルセルなどイージーリスニングのジャンルにおける大スターを輩出して来た“本場”の血を有している人です。ピアニストとしても、楽団指揮者としてもこれまで多くの成功をおさめていますが、なかでも我々日本人にとっては1998年の「ポール・モーリアさよなら日本公演」で、モーリア楽団の指揮をとったことが最も印象深いこととして記憶されているのではないでしょうか。そのガンブスが21世紀の訪れと共にイメージ・チェンジしました。と同時に彼が数は少ないものの作曲家としても優秀な曲を生み出していることも忘れられません。
 
さて、今回のステージも前回同様、ゲストに日本の琴奏者みやざきみえこを迎えています。レコーディングと違い、ライヴのステージはひとつの流れというものを考えて構成されます。これは音楽番組を作る放送関係者も同じだといえますが、同一人物の同一パターン“だけ”では単調になりかねないため、何らかのアクセントをつけるわけです。その工夫が必ずしもうまく行くとは限りませんが、前回の「琴」は、ピアノ&クワルテットの流れの中に見事に溶け込みつつ、日本の音と演奏者の個性を出して印象に残りました。今回もここら辺りに鑑賞のひとつのポイントを置くという楽しみもあります。
 
フランスの香りプラス日本的な雰囲気、このジル・ガンブスのステージから新しいイージー・リスニングの方向が見えてくるのではないでしょうか。
                                    
音楽評論家   宮本 啓




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Gilles Gambus
ジル・ガンブス
1958年2月3日、地中海沿岸の街マルセイユに4人兄弟の末っ子として生まれる。

もちろん、家族の恩恵を受けてきた、5歳から音楽を始め、10歳の頃にはマルセイユにある音楽学校の偉大なる教師の授業を受け、その後の人生に大きな影響を与えた。音楽学校に通う傍ら、普通制中学そして高校では科学コースを卒業した。

16歳で音楽の世界に入り、その後バンドやオーケストラに参加し、そこでアレンジの勉強をした。

1983年よりポール・モーリアのアレンジに参加、現在もポール・モーリア・グランド・オーケストラの指揮者兼ピアニストとしても活躍中。