スティール・パンがとても好きです。
そのかわいい音はまるで天使が作ったおもちゃみたいです
でもその優しい音色の楽器を作るときの音を知っていますか?
ハンマーでごんごん叩かれた激しい鉄の音があたりに響きわたります。
ただの粗大ごみが素晴らしい楽器に変身する・・・
パンはフライパンのパン、素敵な音楽を料理します。
僕は今、トリニダード・アンド・トバゴにというカリブ海の島で
長年の夢がかなって、スティール・パンのレコーディングをしています。
沢山の人たちが集まって、それが大きく美しい一つの歌に変わっていく
その瞬間をつかまえたくて
このすばらしい音楽を、少しでも多くの人たちに聴いてもらえたらとおもっています。
でも、時々、かんがえることがあるのです。
CDは結局、音の缶詰なのかなって。
目の前にいるミュージシャンたちの演奏をCDというお皿にのせる時に
100%な汗と熱気が殺菌処理されてしまっていないだろうかって。
とれたての新鮮野菜をその場で食べたらどんなにおいしいか
今まではトリニダードのカーニバルだけでしか
そんな料理を食べることができませんでした。
ほとんど地球の裏側にある特等席です。
今年も100人編成のエクソダスのどまんなかで, その全開の演奏を聞くことができました。
道にならべると150メートルを越えてしまうオーケストラです。
震えているのは自分なのか、空気なのか
南の島の夜空に音楽が大きな翼を広げて飛び立っていく。
そんなときです。スティール・パンの本当の魅力はライブだとおもうのは
エクソダスと知りあってから10年以上になります。
カーニバルの夜、きらきらの音にひっぱられて飛びだしていった2階のバルコニー
ちょうど彼らが通り過ぎていくところでした。
トラックの上に乗ったバンドはとても近くて
手を振るといっしょうけんめい手を振りかえしてくれた。
20世紀に生まれた楽器が作ったささやかな伝説。
エクソダス
今度は私たちの国に彼らがやってきてくれます。
日本の夏が特等席です。
日本の曲だってあります。
この世界に、スティール・パンが演奏できない曲はないというプライドが
懐かしのメロディーたちをどんなふうに料理するのか
本当に楽しみです。
そして会場のサウンド・エンジニアとして、すこしでも多くのかたがたにエクソダスとトリニダード・アンド・トバゴの熱いソウルを伝えるお手伝いができることを光栄におもっています。
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