日本の皆様
 
 1977年のヘルベルト・フォン・カラヤン指揮によるベルリン・フィルハーモニック管弦楽団との共演が私にとって日本で初めてのコンサートでした。
 
 その後、定期的に日本でピアノ奏者とのリサイタルツアー、ウィーン国立オペラやハンブルクオペラとのオペラ公演などを行ってきました。また、NHK交響楽団やレナード・バーンスタイン指揮による欧州の若手音楽家との「広島平和コンサート」や、ロリン・マゼール指揮によるスーパーワールドオーケストラなど、日本やヨーロッパのオーケストラとも共演をしてまいりました。日本の皆様はいつも広い心をもって私自身と、私の演奏するさまざまな演目を歓迎してくださいました。
 今年は、スウェーデン出身のピアニスト、ルーヴェ・デルヴィンイェル氏とともにドイツリートやフランス音楽、スペイン歌曲を盛り込んだプログラムの上演のため、再来日いたします。これまで同様、詩人をテーマに組んだプログラムとなっております。始めにゲーテの詩をベースに作曲されたベートーヴェンのリート、そしてプーランクによるルイーズ・ド・ヴィルモランの詞をベースとしたリート、マーラーの「リュッケルトによる5つの歌曲」を演奏いたします。後半は、スペインとフランスの音楽です。グラナドス作曲の「トナディーリャス」、モンサルバーチェ作曲による「5つの黒人の歌」、そしてデュパルクとビゼーの曲も上演いたします。
 
 構成いたしましたプログラムはいずれも夕闇から夜へと変化していく情景のごとく繊細さをもってつくりあげております。プログラムを通じて観客の皆様を情緒的な旅へといざなうべく選びあげた曲は、どれも私のこの願いを叶えるものであると確信しております。いずれも名曲であり、私の心だけでなく魂をも揺さぶる作品ばかりです。
 
 アーティストとしての私の責務は、「プログラムを構成する曲ひとつひとつ、そしてプログラム全体と心を尽くして向き合い手がけていくことで、作品の美しさや情緒性など、その偉大さを浮き上がらせること」にあると考えております。私の心の琴線に触れた曲を選曲いたしました。私の全ての情熱を傾け、観客の皆様のために愛しき作品を歌いたいと存じます。
 
 再び日本の地を訪れ、このプログラムをご披露できますことを楽しみにしております。
 
                             バーバラ・ヘンドリックス

Copyright (C)2006 Min-On All Rights Reserved.