カレン・カーペンターがこの世を去ったのは1983年2月4日のことでした。享年32歳の若すぎる訃報に涙してから、かれこれ20年の歳月が過ぎようとしています。この20年間で世の中は何と様変わりしたことでしょう。例えば音楽の流通ひとつをとっても、カレンが他界した直後に黒いLP盤は虹色のCDに姿を変え、今や音楽はデジタル配信の時代に突入し、盤に刻まれるものでさえなくなりつつあります。そしてその間にも絶え間なく、星の数ほど新しいアーティストが登場しては姿を消していきました。そんな激動の中、時代や世代を越えてカーペンターズの音楽がこれほど多くの人々に愛され続けていることに、大きな喜びと驚きを感じずにいられません。

私自身の人生を振り返っても、この20年間は一言では語りきれないことばかりです。学生から社会人になり、カレンはいなくてもせめてリチャードと話してみたいという一心で音楽関連の仕事に飛び込みました。カーペンターズ大好き!という無邪気な熱意が伝わったのか、カーペンターズのアルバム解説を担当するようになり、リチャードとは家族ぐるみで知り合うこともできました。カレンが生きた年月を越え、結婚をして子供を産み、育て、そしてそのシーンのひとつひとつに、いつも必ずカーペンターズの音楽がありました。カーペンターズは現役当時こそポピュラー音楽として世相を映していたかもしれませんが、その後は私の心模様を映す音楽になっていったのです。きっと、みなさんも同じように、カレンの歌声を人生の想い出と共に刻みながら過ごされてきたことでしょう。

そして私に負けず劣らず、カレンとリチャードの音楽が大好き!というのが、今回の主役、峠恵子さんです。峠さんは日本のテレビ番組でリチャードを前にカーペンターズの曲を歌い、リチャードから絶賛された経歴の持ち主です。カレンのように、しっとりと豊かなアルトの歌声が魅力的で、ある機会にギターだけのシンプルな演奏で「青春の輝き」を聴かせていただいた際には、不覚にも涙したことがありました。理想の男性を捜し続け、そんな人と出会えないままこの世を去ったカレンの姿が峠さんの歌声にオーバーラップして胸に迫ってきたのでした。そんな感動を生でみなさんにも味わっていただきたく、カレンの20周忌を迎えるにあたり、わがままな企画を立てました。

「愛しのカーペンターズ」では峠さんの歌声をフィーチュアし、カーペンターズの音楽を長年聞き込んだ往年のファンにも違和感がないよう、オリジナル演奏をなるべく忠実に再現していく予定です。カレンへの哀悼、追悼の意を込めた催しではありますが、故人を偲んでしんみりするというより、これからもずっとずっとカーペンターズの音楽を愛していきましょうという気持を込めて、みなさんと共にカレンとリチャードの音楽を心から楽しむ時間にしたいと考えています。

解説:小倉ゆう子(監修)