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Concert Reviews

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2015年東京国際音楽コンクール〈指揮〉 入賞デビューコンサート

フレッシュな指揮者がいま、世界に羽ばたく
青澤唯夫(音楽評論家)

2015年10月に開催された『東京国際音楽コンクール〈指揮〉』で第1位、第2位、第3位に輝いた3人の若手指揮者による「入賞デビューコンサート」が、2016年5月に大阪、名古屋、東京の3都市で開催された。私は最終日にあたる5月19日、東京オペラシティコンサートホールでの演奏会を聴いた。

アジア唯一の国際指揮者コンクールで、3年に1度開催されて早くも第17回を迎えたが、2000年以来15年ぶりに〈第1位〉が出たというので前評判も高く、入賞者たちのお披露目だけに期待も大きかった。東京公演のオーケストラは読売日本交響楽団。カンブルランやスクロヴァチェフスキの指揮のもとに充実した演奏を聴かせているわが国の代表的なオーケストラである。指揮者にとって不足はないだろう。若々しい指揮者たちによるフレッシュな、元気いっぱいの演奏が楽しめた。

最初に登場したのは、第3位に入賞したドイツのコリーナ・ニーマイヤー(1986年生まれ)。カールスルーエ音楽大学、チューリッヒ芸術大学(修士課程)の出身で、2010年からフランス・ストラスブール大学オーケストラの芸術監督を務めているという。物怖じすることなく、オーケストラを朗々と鳴らす。コロンヌ管弦楽団、南西ドイツ放送交響楽団、フラデツ・クラーロヴェー・フィルなど世界各地でオーケストラを指揮した経験もあるそうだ。曲はプロコフィエフの3曲あるバレエ組曲『ロメオとジュリエット』のなかから最もよく演奏されている第2組曲。血の気の多い指揮ぶりで、旋律の表情づけなどメリハリが利いていた。世界の第一線で活躍する女性指揮者はまだまだ少ないだけに、将来が期待される。

2番目は、第2位入賞の太田弦(1994年札幌生まれ)。コンクール時は東京芸術大学指揮科4年在学中であった。曲はチャイコフスキーの幻想的序曲『ロメオとジリエット』。弦楽器をしなやかに歌わせ、若いのに堂に入った演奏を聴かせた。意欲が先行して力み過ぎる傾向もあったが、キャリアを積むことで解決するだろう。尾高忠明、高関健に師事したそうだが、指揮姿に尾高を連想させるところがあり、表現技術は師のさまざまな面が受け継がれてゆくものだなと興味深かった。

最後は、第1位になったスペインのディエゴ・マルティン・エチェバリア(1979年生まれ)。曲はチャイコフスキーの交響曲第5番ホ短調。オーボエ奏者を経て、大学オーケストラなどの指揮経験も豊富な人らしい。入賞した3人のなかでは最年長で、大人の音楽を聴かせた。といっても長所も短所も出ていて、情感の表出よりもダイナミックな造型に彼の特質が現れていた。表現が一本調子なところ、強奏に力点を置き過ぎて弱奏のニュアンスが不足しがちなのが残念であった。大曲をまとめ上げるには力量がまだ不充分で、読譜力、構成力、オーケストラの統率力ともに課題も少なくない。活躍中の山田和樹は彼と同い年だし、フルトヴェングラーがベルリン・フィルの常任指揮者に抜擢されたのは36歳、メータがロサンゼルス・フィルの音楽監督に就任したのは26歳、ネゼ=セガンがフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に決定したのは35歳の時であった。一流指揮者の芸術水準は、若いころからとてつもなく高いのである。

若くして世界の大ステージで活躍するドゥダメルやハーディングのような先輩もいることだし、3人それぞれが高い志をもって今後とも精進してほしい。指揮者というのは経験がものを言う仕事で、ほんとうの勝負は50代からといわれている。先は長いのだから、着実にマイペースで努力を重ね、力を蓄えていってほしいものである。激戦だった東京国際音楽コンクールに入賞して、幸運なデビューを飾った彼ら若い指揮者たちの今後の活躍を大いに期待しよう。

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