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はじめての京劇

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メイクに関して

人によって顔の色が違うのはどうしてですか?(色の意味)

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舞台上の効果と、哲学的な意味の二つがあります。

もし仮に、みんな同じような顔色の人たちが舞台の上に並んでいたら、誰が誰だが、よくわかりませんよね。京劇が誕生したころは、日本でいえば江戸時代で、今と違って電気を使った明るい照明はありませんでした。劇場は昼間でも、ちょっと暗めでした。京劇の役者のメイクや衣装の色を、登場人物ごとにさまざまに分けると、観客にはっきりとその人物の個性がわかるようになります。これが、舞台上の効果です。
また、もともと中国人は、日本人よりも派手な色合いを好む傾向があります。京劇の色彩感覚は、日本人の目から見るとケバケバしいですが、中国の町の中で見れば、それほど浮いている訳ではありません。
もう一つ、哲学的な理由もあります。中国古来の自然哲学では、「陰陽五行思想」といって、この世のすべての物を「木火土金水」の五つに分類します。木は、季節は春で、方角は南、色は青、味は酸味。火は夏で南で赤、味は苦み。土は「土用」で中央、黄色、味は甘み。金は秋、西、白、味は辛さ。水は冬、北、黒、味は塩味。……と、実際はもっと複雑で細かいんですが、こういう枠組みがありました。
中国の美術とか、都市設計、風水、料理、伝統医学のコンセプトは、みな「陰陽五行思想」の自然哲学の影響を受けています。
京劇の「隈取り」でも、例えば三国志の曹操の顔を真っ白に塗り込めるのは、彼は「秋」とか「金属」のように辛辣で冷酷な悪役だからで、史実に存在した曹操の顔が真っ白だったわけではありません。三国志の英雄である関羽の顔は、火のように真っ赤で、苦みばしったニヒルな表情を常に浮かべていますが、これも彼が「赤誠」の人だからです。
まあ、舞台上の効果も、哲学的な意味づけも、そんな理屈はある意味ではどうでもいいんです。京劇の舞台はきらびやかで、綺麗に見えれば、それでいい、ということなんでしょうね。

どうしてあのような恐い顔にするのですか?

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やっぱり、コワイですか(笑)。
もともと京劇の美学では「テンション」を重んじます。ピーンと張りつめた糸のような緊張感。それが京劇の美学です。京劇の役者の声が甲高いのも、伴奏楽器の胡弓の音色がキイキイと高いのも、役者のメイクの眉毛がつりあがって目がパッチリ開いてるのも、みなテンションを強調する演出なのです。中国でも、水や緑が豊かな南のほうに行くと、ゆったりとした癒し系の芝居もあります。しかし、乾燥した北のほうでは、京劇のようなテンションの高い芝居が多いのです。
まあ、これは中華料理の味が、地方ごとに違うのと似ています。北京料理はピリリと塩味がきいてますが、広東料理はとろりと甘口です。芝居も料理と同じで、地方ごとに風格が全然違うんですよ。
京劇では、美男美女の化粧は「俊扮ジュンバン」と言います。「俊扮」のコンセプトも、いかに役者の顔をキリリと引き締めて見せるか、ということです。メイクのときも役者は、おでこのところを黒い布でキリリときつくしめます。そうすると、眉がつりあがって目がパッチリと見えるんです。ふだんはちょっとタレ目の役者でも、舞台上ではテンションが高い顔になる(笑)。北の中国人から見るとカッコいいのですが、南の中国人とか、日本人の目から見ると、ちょっと怖く見えるかもしれませんね。
このほか、クセのある豪傑を演ずる役者は、顔に「隈取り」を描きます。遠目に見ると、悪役プロレスラーの覆面のようにも見えますが、「隈取り」は顔の地肌を濃い化粧で塗り込めるものです。これも、初めのうちはちょっと怖く見えるかもしれませんが、慣れれば、そんなに怖くないですよ(笑)。

化粧・俊扮の描き方

ファンデーションを塗る。むらなく均一になるようにする。 ファンデーションを塗る。むらなく均一になるようにする。 目の上下に紅を塗る。しだいに薄くなるようにグラデーションをつけ、額に紅を引く。 目の上下に紅を塗る。しだいに薄くなるようにグラデーションをつけ、額に紅を引く。
アイラインと眉を黒で描く。まずドーランで、その後は黒粉で描く。 アイラインと眉を黒で描く。まずドーランで、その後は黒粉で描く。 眉を吊るように網子で引っ張り上げる。左右のバランスをとることが大切。 眉を吊るように網子で引っ張り上げる。左右のバランスをとることが大切。
水紗で網子を隠しながら、髪の毛のラインをきれいに作っていく。 水紗で網子を隠しながら、髪の毛のラインをきれいに作っていく。 靴を履き、衣装を着け、最後に帽子をかぶる。 靴を履き、衣装を着け、最後に帽子をかぶる。
髯を耳にかけて、髯と口の位置を確認する。 髯を耳にかけて、髯と口の位置を確認する。 小道具の扇子を持って、皇帝役として舞台に登場する直前の姿が完成する。 小道具の扇子を持って、皇帝役として舞台に登場する直前の姿が完成する。

化粧・瞼譜(隈取り)の描き方

目と口のまわりのラインを黒粉で描く。 目と口のまわりのラインを黒粉で描く。 白で粗い紋線を描く。 白で粗い紋線を描く。
黒で目、口と額のラインを描く。 黒で目、口と額のラインを描く。 薄い灰色を眉に入れる。 薄い灰色を眉に入れる。
黒でさらに細かく口の下、鼻を描く。 黒でさらに細かく口の下、鼻を描く。 金色を鼻と眉に入れる。 金色を鼻と眉に入れる。
赤で塗る。「九蓮燈」の火判官の隈取りである元宝瞼の完成。
蝙蝠の模様が浮かび上がる。 赤で塗る。「九蓮燈」の火判官の隈取りである元宝瞼の完成。 蝙蝠の模様が浮かび上がる。

※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館

隈取りしている人としていない人の違いは何ですか?(役柄)

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隈取りは、性格にクセのある個性派の豪傑の役がします。
京劇は伝統劇なので、誰がどんな化粧や衣装を着るかは、約束ごとで決まっています。
京劇の役柄は「ジュンダンジンチョウ」の四つに大別されます。「生」は男の役、「旦」は女の役、「浄」は顔に隈取りを描く豪傑の役、「丑」は道化役です。
顔に隈取りを描くのは「浄」、すなわち男役の一部だけです。
三国志でいうと、劉備や諸葛孔明、周瑜、魯粛は「生」で、顔のメイクは正統派の美男子である「俊扮ジョンバン」です。 いっぽう、曹操や孫権、張飛など、性格にクセのある個性派の豪傑は「浄」で、顔に隈取りを描きます。微妙なのは関羽で、人格者でもある関羽は京劇のキャラクター上は「生」ですが、舞台演出上は彼の赤誠の心を示すために顔に真っ赤な隈取りを描くので「浄」になります。京劇役者にとって、関羽の演技は、「生」の重厚さと「浄」の豪快さの両方を要求されるため、難度が高いキャラクターです。
このほか、観客の笑いを取る道化役である「丑」も、隈取りというほどではありませんが、顔の中心とか、鼻のところなどをちょっと白く塗ります。西洋のピエロが独特の化粧をするのと、似ています。
京劇の隈取りのキャラクターで日本でも有名なのは、「覇王別姫」の項羽とか、「西遊記」の孫悟空、猪八戒、沙悟浄などですね。いずれも人間離れした個性的な男性キャラです。

宋江(生) 宋江(生) 扈三娘(旦) 扈三娘(旦)
関勝(浄) 関勝(浄) 時遷(丑) 時遷(丑)

2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より

絵の具はどんなものを使っていますか?

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絵の具? ああ、「顔料」のことですね(笑)。
日本でも中国でも、演劇に使う化粧品は、プロ用の「舞台用化粧品」を使います。
日本では、歌舞伎、演劇、映画、テレビ、バレエなどでは、普通の化粧品とは違う舞台用化粧品を使います。一般の人でも、結婚式のときの「ブライダルメイク」では、この「舞台用化粧品」を使うことが多いですね。こうした「舞台用化粧品」は、強い照明をあて、遠くから見ても美しく見えるようにするために特化した化粧品です。もし、普通の会社員の女性が「舞台用化粧品」でメイクをして通勤電車に乗ったら、派手派手しくて目立つでしょうね(笑)。
日本では、こうした「舞台用化粧品」は、誰でもインターネットとか専門店などで買うことができます。
京劇も、プロ用の「舞台用化粧品」を使います。京劇専用の化粧品というのはありません。テレビや舞台演劇、ダンスなどと共用です。もっとも京劇では、隈取りなどで、テレビ俳優や映画俳優が使わない色も使います。
中国製の「舞台用化粧品」は、値段の高いものから安いものまで、品質はさまざまです。
お金のある京劇団は、肌にやさしい高級品を使うことができます。貧乏な京劇団は、石油のにおいがする安物の化粧品を使いますが、これは役者の肌には悪いです。ただ、こうした化粧品の価格や品質の差は、舞台の上で強い照明を当てると、あまり気になりません。
来日した京劇団は、日本で高級な「舞台用化粧品」を購入して使う場合もまれにありますが、日本製は比較的高価ですので、本国から持参した使い慣れた化粧品を使うことが多いようです。

メイクの途中で失敗したら、どうやって修正するのですか?

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盧後義
盧後義(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

プロの役者がメイクを失敗することは、めったにありません。
化粧をする際は、あとで修正しやすいよう、淡い色から先に塗って濃い色は後にするなど、色を塗る順番の工夫はあります。小さな失敗なら、その上から化粧で「重ね描き」してごまかすことができます。大きな失敗なら、「化粧落とし」で最初からやり直します。ただ、繰りかえしになりますが、そんな失敗はめったにありません。

肌荒れしませんか?美肌対策を教えてください。

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昔の日本では、昭和の初めごろまで「おしろい」の材料として「鉛白」を使っていたため、女性や役者が鉛中毒で病気になったり死亡する事例があとをたちませんでした。
事情は中国でも同じでしたが、近年は舞台用化粧品の質が向上したため、化粧による肌荒れは、それほど気にしなくて良くなりました。
美肌対策は、役者によりけりです。
京劇史上、最高の女形であった梅蘭芳は、手を美しく守るため、外出するときは夏でも手袋をしていました。また食事や飲み物も、刺激物は避けていました。
しかし現代の京劇女優さんのなかには、強い酒もタバコも平気、という人がけっこういます(笑)。
これは私の偏見かもしれませんが、京劇女優さんは、あまり美肌対策をしなくても、それなりに綺麗な肌の人が多いような気がします。もともと中国の気候は日本より乾燥しており、夏と冬で暑さと寒さの差が大きい。特に、夏や秋の北京の日差しの強さは、空気が乾燥していることもあり、皮膚につきささるように痛いほどです。そんな空気のなかで生まれ育った京劇俳優の皮膚も、日本人より、強く鍛えられているような感じを受けます。
また京劇俳優は、大きな声を出し、体をよく動かします。京劇の稽古や本番をすることが、実はそのまま、体の血行を良くし肌の美しさを保つのにも役立っているようです。

メイク落としは何を使っていますか?

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メイク落としも、価格によってピンキリです。お金に余裕のある俳優なら、自弁で高級なクレンジングクリームを使えます。普通は、楽屋に置いてある劇団の公共の消耗品である安いメイク落としを使います。

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小道具・衣装に関して

あのような衣装で動きにくくないですか?何キロくらいあるのですか?

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2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より

京劇の衣装も、役柄によってピンキリです。
日本の「足軽」にあたる下級の兵士の役は、ズボンに薄底の靴で、軽くて動きやすい服装です。長袖長ズボンなので汗はかきますが、そんなに重くはありません。
問題は、武将級の鎧武者の役です。これは頭に大きな冠をかぶり、背中に小さな三角の旗を四本立てて、重々しい大鎧を着て、足には厚さ十数センチもある厚底の靴を履き、手には槍などの武器を持ちます。鎧は布製、武器は木に絵の具で着色したものなので、本物よりはずっと軽いとはいえ、頭から足の先まであわせて十数キログラムくらいの重さになります。
男も女も、鎧を着た武将の役は、ふだんから筋肉をきたえているので、そんな重い衣装でも美しくしなやかな立ち回りを演ずることができるのです。普通の人なら、厚底の靴を履いて舞台に立っただけでバランスを崩してコケてしまうかもしれません。

あの豪華な衣装は、実際にその時代に着ていた物ですか?

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2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より

京劇の衣装は、歌舞伎の衣装と同じで、テレビや映画のような「時代考証」はありません。今から1800年前の「三国志」の登場人物も、今から800年前の「水滸伝」の登場人物も、同じような服装・髪型をしています。ただ、さすがに「現代京劇」では、登場人物は近現代の服装をしています。
一部の新作の京劇では、歴史ものでも、あるていどその時代の衣装のデザインなどを取り入れることがあります。
日本でも、歌舞伎の「菅原伝授手習鑑」は今から1100年前の平安時代の話のはずなのに、登場人物は江戸時代のような服装をしています。もし映画やテレビドラマなら違和感がありますが、歌舞伎は舞台演劇なので、この種のアナクロニズムはあまり気になりません。
京劇も、登場人物の衣装の大半は明の時代(14世紀~17世紀)の衣服を舞台用にアレンジしたものですが、それをどの時代に使っても、あまり違和感を感じません。舞台演劇の効用ですね。

下駄のような靴は歩きにくくないですか?

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厚底靴。高方靴とも言う。素材は緞子で、靴底は紙を何枚も重ねて厚みを出している。蟒、靠、宮衣などを着る場合はこれを履く。<br />
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館
厚底靴。高方靴とも言う。素材は緞子で、靴底は紙を何枚も重ねて厚みを出している。蟒、靠、宮衣などを着る場合はこれを履く。
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館

京劇では、二枚目の役とか英雄豪傑の役は、背を高く見せるために、厚底の靴を履くことがあります。靴底の厚さは数センチから十数センチまで、いろいろあります。京劇俳優は、ふだんから訓練しているので、こんな靴でも自在に歩けるのみならず、立ち回りもできます。

林冲
林冲(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

慣れないしろうとが厚底靴を履くと、歩くどころか、立つことも難しく、体重のバランスがうまく取れずに転んでしまいます。

あの触角の様なものは何ですか?また、何で出来ているのですか?

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栄江
栄江(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

「雉尾冠(ちびかん)」のことですね。武将や、軍の司令官がかぶる冠です。エビの触覚のように長いのは、雉(きじ)のシッポで作った装飾です。日本でも、戦国時代の武士がかぶっていた兜にも、「鍬形(くわがた)」」といって、金属の板で作ったV字形の装飾が、よく飾ってありました。京劇に出てくる武将も、遠くから見ると長大なV字形に見える雉尾冠をかぶり、威厳を示しているわけです。
雉尾冠は、俳優の演技の小道具でもあります。悔しいときは雉のしっぽの片方を口で噛む。気分が高揚したときは頭をぐるぐる回し、雉のしっぽで空中に大きな円を描く。高度な緊張感をあらわすときは、頭を絶妙な角度で傾け、片方の雉のしっぽの先端が真上の天をピタッと指す位置で静止させる。……等々、しなやかな雉のしっぽを自在に使って、さまざまな感情を表現します。
この他、役者が異民族の役を演ずるときも、雉尾冠をかぶってエキゾチックな感じを出すことがあります。

背中に差しているは旗は何ですか?重たくないですか?

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※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館

「靠旗(カオチー)」のことですね。京劇では、大鎧を着た騎馬武者が、鎧の背中に三角形の小旗を四本、指すことがあります。この旗は、この武将が司令官であり、後ろに多数の足軽を引き連れていることを表します。たとえ舞台上にこの武将を演ずる役者しか立っていなくても、観客は、この武将の背後に多数の足軽がつきしたがっていると想像する、というのが京劇の約束ごとの一つです。
靠旗はそれなりに重いですが、俳優は体を鍛えているので、ぶあつい鎧武者の衣装を着ても立ち回りを演ずることができるのです。
うまい役者は、靠旗を自在に使って演技します。役者が立ち回りをすると、背中の旗がバタバタと空を切る音を立てて、迫力を増します。

関勝
関勝(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

また、敵が投げつけた槍を、背中の旗にうまく当てて敵に向かってはじき返すという、難しい演技の技もあります。立ち回りの名優ともなれば、敵から奪った刀を、背中の旗にうまく引っかけてぐるぐると回し、敵に向かって飛ばす、という離れわざも見せてくれることがあります。

髭が何種類かありますが、違いは何ですか?重たくないですか?

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栄江と盧後義
栄江と盧後義(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

髭の重さは、それほどではありません。
髭の形や色にもいろいろあります。道化役がつける髭は比較的小さいですが、正統派の二枚目や豪傑がつける髭は、顔の口とあごを完全におおいかくして、胸まで垂れるほどの大きさがあります。
髭は、その人物の年齢や気品などを表します。例えば、三国志の曹操は、若いころは黒々とした髭を顔につけますが、老年の曹操を演ずるときは灰色っぽい髭をつけます。
また、異民族とか山賊など、クセの強い人物を演ずるときは、赤い髭をつけることもあります。
髭も、演技の小道具として重要です。例えば、『覇王別姫』の項羽は、豪傑なので、大きくて立派な髭をつけます。項羽を演ずる俳優は、感情を表現するために、両手で自分のひげをしみじみとかかげて回想にふけったり、両手で髭を脇へ投げかけたり、顔をぴくぴくと痙攣させて長いひげを波打たせたり、……と、心理描写の小道具として、髭を存分に使います。

黒満髯。口を全部隠す髯という意味。色は黒、白、灰色以外にも紫もある。武将や年を取った人がよく使う。生役の満髯は浄役用より少し短い。 黒満髯。口を全部隠す髯という意味。色は黒、白、灰色以外にも紫もある。武将や年を取った人がよく使う。生役の満髯は浄役用より少し短い。 白三?髯。年を取った人が使用。「文昭関」の伍子胥はあせりのあまり、一夜で髯が白くなる。役者は歌いながら三?髯を黒から白に変える。 白三?髯。年を取った人が使用。「文昭関」の伍子胥はあせりのあまり、一夜で髯が白くなる。役者は歌いながら三?髯を黒から白に変える。
黒三?髯。最もよく使われる。皇帝や宰相、将軍、軍人、官吏、文人、隠士など、各身分の中年役が使う。 黒三?髯。最もよく使われる。皇帝や宰相、将軍、軍人、官吏、文人、隠士など、各身分の中年役が使う。    

※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館

帽子の重さはどのくらいあるのですか?

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胡蝶?。女性のかぶり物で、胡蝶の形から胡蝶?と呼ばれる。女性の将軍や英雄がかぶる。固定された形。<br />
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館
胡蝶?。女性のかぶり物で、胡蝶の形から胡蝶?と呼ばれる。女性の将軍や英雄がかぶる。固定された形。
※出典:魯大鳴『京劇への招待』小学館

京劇の「かぶりもの」は、身分や役柄に応じて、さまざまです。楊貴妃がかぶる宝石をちりばめた冠は重々しいですが、諸葛孔明がかぶっている頭巾は布なので軽いです。

呼延灼
呼延灼(2009年中国国家京劇院 新作『水滸伝』より)

ただ、楊貴妃がかぶるような重々しい冠も、本物の冠ではなく、芝居用に軽い材料で作ってありますので、見た目ほどは重くなく、せいぜい2~3kgていどです。

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歴史等に関して

京劇はいつ頃生まれたのですか?

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京劇の歴史は意外に新しく、二百年ちょっとです。
1790年、乾隆帝(けんりゅうてい)八十歳の祝賀のとき、北京からはるか南の安徽(あんき)省から四つの劇団「四大徽班(しだいきはん)」が相次いで北京にやってきて、北京の町で芝居を披露しました。南の芝居なので、役者の歌やせりふの言葉は北京語ではありませんでしたが、俳優の歌や演技、立ち回りの技が洗練され、芝居の中身も面白かったので、たちまち北京で人気を得ました。
1790年といえば、日本では松平定信が「寛政の改革」を推進しており、ヨーロッパは「フランス革命」の激震がはしっていました。中国は「清(しん)」王朝の最盛期が終わりかけていた時代でした。
その後、やはり北京からずっと南にある湖北(こほく)省からも俳優がやってきて、北京で成功しました。この安徽と湖北の地方劇が北京で融合して、昆劇など他の芝居のエッセンスもとり入れつつ、19世紀の前半に京劇の基礎ができあがりました。
京劇は最初のころ、「京劇」とは呼ばれていませんでした。時代によって、「二黄」「皮黄」「京戯」「京劇」「国劇」「平劇」など、さまざまな呼び方をされていました。京劇の名称が「京劇」に統一されたのは、1949年に中華人民共和国が成立したあとです。
なお日本語では、「京劇」は「ケイゲキ」と「キョウゲキ」という二つの読み方があります。昭和40年代くらいまでは京劇を「ケイゲキ」と読むほうが普通でしたが、現在では「キョウゲキ」という読み方が普及しています。

日本に京劇が紹介されたのは、いつ頃ですか?

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1919年、大正8年に、京劇の名優・梅蘭芳(メイランファン)が来日公演を行いました。これが、日本に本格的に京劇が紹介された最初です。
それ以前にも、中国通の日本人は京劇の存在を知っていましたが、普通の日本人は知りませんでした。
ちなみに、昔の日本人は、中国人の名前を、日本語の漢字の読み方で覚えていました。孫文も蒋介石も毛沢東も、ソンブン、ショウカイセキ、モウタクトウ、と日本語の漢字の読み方で記憶されました。唯一の例外は、京劇俳優の梅蘭芳です。彼の名前だけは、昔の日本人も「メイランファン」という中国語の発音で記憶し、日本の国語辞典にもその読み方で収録されました。
この一事をもってしても、梅蘭芳の来日公演が、当時の日本人にとっていかに忘れがたいものであったかがわかります。

日本の歌舞伎との違いはなんですか?

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京劇と歌舞伎は、同じ東洋の演劇なので、よく似ています。役者が「見え」をきる、鳴り物などにぎやかな伴奏がある、客席から観客が大声で喝采を送る、芝居は義理人情の世界を描いたドラマが多い、……等々。
もちろん、外国の芝居なので、違いもあります。
例えば歌舞伎では、役者はセリフは言いますが、歌はうたいません。しかし京劇の役者は、セリフだけでなく、歌もよくうたいます。京劇を英語で「ペキン・オペラ」と呼んだように、京劇はオペラやミュージカルに近い音楽劇です。
また歌舞伎の役者には「襲名制」という制度があります。例えば「市川團十郎」という名前は、1660年生まれの初代から、1946年生まれの十二代目まで、三百年にわたって代々受け継がれてきました。いっぽう、中国社会には「襲名制」という伝統はありません。京劇の役者の名前も、すべて一代限りです。名優の梅蘭芳も、「二代目梅蘭芳」「三代目梅蘭芳」はいません。梅蘭芳の息子で、父と同じ「おんながた」の京劇俳優になった梅葆玖(メイバオジウ)氏も、名前は「梅葆玖」であり、「梅蘭芳」ではありません。
歌舞伎の役者は、江戸時代から代々続いて今日に至っている家柄が珍しくありません。京劇でも「梨園世家」といって、たまたま親子代々、役者となった家族はいます。ただ、日本のように、三百年もずっと役者業を家族で受け継ぐ、というケースはまれです。中国の梨園世家は、五世代も続けば、かなり長いほうです。

京劇で有名な作品といえば何ですか?

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『覇王別姫』
2006年中国国家京劇院 『三国志~諸葛孔明』より

日本でも有名なのは、項羽と虞美人の悲劇を描いた『覇王別姫』とか、中国の古典『三国志』『水滸伝』『西遊記(孫悟空)』『白蛇伝』などの芝居などです。これらのストーリーは日本人にもなじみがあるので、共感しやすいです。
中国では『隋唐演義』『楊家将演義』『説岳全伝』などを原作とする古典京劇や、『智取威虎山』や『紅灯記』といった革命現代京劇も人気があります。

京劇を観たことのない人が最初に観るべき作品は?

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名優・李光氏
孫悟空を演じる名優・李光氏(2002年中国国家京劇院『間天宮』より)

これは……何とも言えませんね(苦笑)。
京劇の演目は、登場人物がたった一人という一人芝居から、二、三人だけの小さな芝居、のべ数十人の役者が登場する大がかりなものまで、さまざまです。
また、悲劇、喜劇、深刻な内容の名作、お笑い系の軽妙なコント、歌とセリフ中心の芝居、立ち回り中心の芝居……と、風格もいろいろです。
人によって好みが違うので、どれが一番おすすめ──とは、ちょっと言い難いです。
ちなみに、私自身が最初に夢中になった京劇は、孫悟空が主人公の『大鬧天宮(天界で大暴れ)』という芝居でした。
同じ芝居でも、演ずる俳優さんが変わると、まったく違う芝居になってしまう。これは歌舞伎でも京劇でも、同じことです。私が最初にはまった京劇は、中国国家京劇院(当時の名称はまだ中国京劇院でしたが)の『大鬧天宮』で、孫悟空を演じたのは京劇の名優・李光氏でした。

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